海の底には何がある

これは日記だ。ブログじゃない。

ゴミグモは餌の取れやすい方向を学習するよ論文

Spatial learning affects thread tension control in orb-web spiders

ええっと、たまには自分の書いた論文の内容について紹介する日があっても良いかと思って。真面目に仕事もしてるんだよって。

いや、いくらクモの糸がスーパーファイバーだからって言っても、網にぶつかった餌を放置してたらそりゃ逃げられるわけで、クモとしてはとっとと網に引っかかった餌を見つけて噛みつきに行かなきゃいかんと。で、網を使うクモってのは視力があまり良くなくて、もっぱら網の糸を伝わる振動で、餌のいるのを知るわけだ。餌が逃げようとして暴れるのがその存在をクモに知らしめさせると言う、この世の中の皮肉に涙が出てくるのよ。

で、どうやったら上手く餌を見つけられるかと言うと、その秘訣は糸電話ですよ奥さん。よく聞こえようとすれば糸をピンと引っ張ればいいわけで、私のありがたきネタ生物であるところのゴミグモが、網の上で餌を待ってる時にどうやら縦糸を引っ張ってるって事がわかったのが2010年の事。で、その引っ張り方と言うのが、縦には強く引っ張るんだけど横はイマイチというわけ。

なんでやねん!と当然思うんだけど、ひょっとして網の形と関係あったりするのかなあと言うことになる。クモの網ってのは少し縦長になってるもので、下向いてとまってるクモから見ると縦の部分の面積が横よりも大きくなっている。当然餌も縦の部分に多くかかるだろうから、クモがその事を学習して、餌のかかりやすい方向に縦糸を引っ張って網の感度を上げててもおかしくないだろうと言う事だ。

で、もし本当にこれが空間学習なんだったら、横の方ばっかりに餌かけてやれば、横方向に強く引っ張るようになるんじゃないかと思って実験したら予想どうりに反応してくれました、というのが、今回のお話。

真面目な事を言うと、これまで動物の空間学習ってのはその結果として動物の積極的なアクションに結びついていたところ(餌を隠した場所を覚えておいて後から取りに行くとか)、待ち伏せ型捕食者のクモの場合は、学習の結果として、ある場所に将来餌が来るのを予想してそれに備えるような反応を示すようになるんだ、ってのが面白いところ。大事な人から毎日同じ時間に電話がかかってきてたら、その時間の前になったら受話器をじっと見つめて呼び出し音が鳴るのを今か今かと待つようになるよねって、そういう事(←携帯持ってないので例え話が微妙に古くさい)。