海の底には何がある

これは日記だ。ブログじゃない。

「?」から「!」へ

昨日で今年度の講義がすべて終了。新しい環境で何かと戸惑うことの多い一年であった。思えば私は非常勤時代からずっと教養の生物学を担当してきている。で、その目的としては、おそらくこれまで生物学にあまり興味を持たず、またこれからもほとんど関係のない生活をするだろう人たちに、少しでも生き物のことに興味を持ってもらい、願わくば社会に出てからも時々は生き物のことを気にかけるようになってもらうことじゃないかと思っている。だから、講義は聞く人が面白いと思ってくれるようなものにできるだけしたいと心がけている。

で、私としては生物学の面白さと言うのは、「あの生物にはこんな性質があって、この生物はこんな性質ですよ」というよりも「あの生物がこの性質を示すのにはこんな理由があって、で、この理由はこの生物ではこんな形で現われているんですよ」っていう所にあると思っている。というか科学/理科の面白さってのは「物事には理由があるんだ!」ってことだと思うのだ。

なので、講義では生物学的現象の裏にある進化のロジックなどを一生懸命話しているのだけど、どうもこの一年非常に手ごたえが悪かった。で、それはなぜだろうとずっと考えて、終わりの時期になってようやっとわかってきたのだが(もっと早く気づいとけよ>私)、どうも私が自明だと思っていた生物学的というか理科的な面白さというものが、聞き手に共有されていないみたいなのだな。これはひょっとしたらいわゆる文系学生の学習ハビットではないかと疑ったりしているのだけど、彼らの多くは「あの生物にはこんな性質があって、この生物はこんな性質ですよ」という知識を流しこまれることだけを求めているように感じることがある。

しかし、だからといって彼らの望むように講義形態を変えればよいのかというとそうでもないだろう。自分の将来に役に立たない情報を詰め込まれることに喜びを感じる人がそうそういるとは思えない。多くの人は単位のためだけにそうしているのだ。で、それは誰にとっても幸せなことではない。

ということで、私の来年の課題は、講義のできるだけ早い段階で学生達に「理由があることの面白さ」について気づいてもらうことだ。多分そのためには、理由と対になる謎/疑問の提示を上手く行う必要があるのだろう。今もこれはやっているつもりなのだが結果的に上手く言ってないわけで、きっと何か新しい仕掛けが必要なのだ。はてさてどうしたもんだろうか。