海の底には何がある

これは日記だ。ブログじゃない。

他意はないのに

私は世の大学から出席点を追放する会の会長なので、当然自分の講義で出席は取らない。おかげで「私語をするなら教室の外でやってね」と強い立場で主張できるわけだ。とはいえ、それでもおしゃべりに興じる人は出てくるわけで、今年のように受講生が400とかになると、一回の授業で一回くらいは注意というかお願いしなくちゃならない。「あのー、おしゃべりしたいのなら外でやってもらえないでしょうか」と、丁重に頼むわけ。ところが今年は、言われた方がこちらを無視しようとするケースが目につく。黙り込んでこちらの問いかけには反応せず、うつむいて目を合わせないようにするのだな。で、当方困ってしまう。話しかけているのだから、何らかの答えを期待するのだけど、なにも返ってこないからだ。しょうがないので「あのー、どうしたいのか返事してもらえないでしょうか」と問い直すのだけどやっぱり下を向いて押し黙るばかり。じっと耐えていればそのうちこちらが諦めて先に進むと思っているのだろうか。こちらはどうしたいのか聞きたいだけで、そのように伝えているつもりなのだけどなあ。むうと思ってずっと待っていると、そのうち向こうも耐えられなくなって視線を上げてくるので、そこをつかまえて「そう、今顔を上げたあなた。ねえ、どうしたいんですか?」とさらに何度も訴えて、やっと反応を得るのだけど、それがただの「すみません」だったりする。「いやすみませんじゃなくって、私が言いたいのは、喋るのは一向に構わないけどそれなら教室の外でやってください、ということなんだけど」というと、「教室にいます」と来る。そうして私はやっと「じゃあ静かにしていてくださいね」と言えるわけだけど、このやりとりのために数分を費やすというのは無駄で無駄で仕方がない。思うに、彼らは私の言葉を文字どおりには受け取らず、単なる怒りの表明とか、もしくは学生に恥という形の罰を与えるためのものと受け取っているのではなかろうか。なので、嵐が過ぎ去るまでひたすら首をすくめているのじゃないかしら。私は文字通り彼らがどうしたいか聞いているだけなのだがなあ。彼我のディスコミュニケーションをどうやったら解消できるか、何か良い知恵はないだろうかしら。