海の底には何がある

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綱渡り

さらにしつこく日本の高等教育を支える国家的大事業に起きた過去最大のトラブルについて。asahi.com(朝日新聞社):センター試験で157人に配布ミス 「公平性に影響」静岡大謝罪 - 受験ニュース - 2012年度大学入試センター試験 - 教育によると、

同大によると、ミスがあったのは静岡東、静岡市立、富士の3高校の試験場。このうちの4教室で受験した計157人に影響があった。
ということなので、一教室あたりにすると40人弱の受験生がいた事になる。受験生の入室完了から試験開始までが20分なので、この時間で写真シールを一枚ずつ配り、受験生に写真票の上からシールを貼らせて受験票から切り離させ、それを順番に集めて紐にとおし、二種ある問題冊子を個々の受験生の条件に応じて一冊ないし二冊を一人ずつ配り、問題訂正用紙も一人ずつ配り、さらに解答用紙も一人ずつ配る必要があるわけだ。さらに、試験開始までに受験生に名前や受験番号を書かせて間違いがないか確認する必要はあるし、携帯電話の処置を確実に行わせる必要はあるし、他にもいろいろいろいろ指示のために言わなきゃならないセリフがある(この説明と配布を平行してやるわけにはいかないと来たもんだ)。この作業に使える時間がわずか20分。正直言って時間的にカツカツ。っていうか、前と比べてやらなきゃならない事がかなり増えているのに、そのために用意されている時間が変わらないっていったいどういうことだ。

いやそれより重要なのは、

試験監督は、1教室につき2人が配置されている。
と、トラブルのあった教室ではこの作業を二人でやる必要があった事。二人のうち一人はマニュアルに記述された指示を読むのにアップアップだから、配布は大部分一人で行わなければならない事になる。私の今回の場合だと70人弱の教室を4人で監督したので、一人が説明役でも配布役は三人いる事になる。一人あたり20人強の受験生への配布を受け持ったわけだけれど(それでも時間的にはカツカツ)、それがこのトラブルのあったところでは40人弱への配布を行わなければならない。説明読む係の監督が配布を手伝えるだろうか?と考えてみたけれど、今回のように配布手順が複雑だと、例えば途中から手伝いに入ったりすると逆に混乱するように思われるので避けた方が良さそうだ。で、例えば5分ほども遅れて入ってきた受験生がいようものなら、そこまで行ったいろんな説明をその受験生向けにあらためてする必要が生じて、そのために監督が一人取られる事になる。二人しか監督がいない教室の場合、これが起こると致命的なわけだ。

いやでも、おそらく最も重要な事は、教室に一人でも正しい手順を理解している監督がいれば、本来配るべき問題冊子を配り損なうようなミスは起こらないと期待できること。これは言い換えると、監督が二人しかいない場合、教室の全ての監督が手順を誤って理解している可能性が高まり、四人監督のいる教室より圧倒的に危険であると言うことだ。だから上の記事にあるトラブルの起きた教室はすべて監督が二人しかいなかったのだと思われる。で、これは今回のトラブルが構造的に生じている事を示唆しているのだと私には思われるわけだな。手順を完全に把握していなかった人(私も危うかったところ)は潜在的にはもっともっといたと思われる。

今週は授業最終週。毎日気が楽になっていくありがたい週だ。で、今日終わりになった少人数科目の一つでは、受講者になんでもいいから好きな本を読んできてもらってその内容を紹介してもらう、という趣向で回したのだった。これは一回生向けの科目で、一回生の課題としては、受け身じゃなくて自主的に大学での活動を行えるようになる事で、それには学生の裁量を大きくしてやる事が重要であると考えて、それで、なんでもいいから好きな本をネタに何か語れ、という事にしたわけだ。で、やってみると、こちらの予想以上に小説と自己啓発本の類ばかりが紹介されて、そうか今どきの人は、こんなにも興味関心が内側向きなのであるなあと驚いたと言う(小説も頭の中で作られるもので、そういう意味で内向きの書物)。いや、まあまだ自我も完全に固まってないこのくらいの年頃の人が内側に主たる関心を向けるのは理解できるのだけれど、でももちょっと自分の知らない外側に目を向けるのも必要かと思う、そういうのも本を読む意義の一つだよ、と最後に一席ぶっておく。

晩ご飯のおかずは宇宙イモの天ぷらだとヨメサンが言う。宇宙イモとはスペースシャトルに載せられて宇宙を旅した種芋から育ったイモであろうかと思うとさにあらず。ヤマノイモ科の植物でツルからぶら下がったむかごを食べるものらしい。空中にぶら下がっているムカゴを称して宇宙イモって、そりゃあまりに強引なネーミング。