海の底には何がある

これは日記だ。ブログじゃない。

もっとお金を

『日本の「食」は安すぎる』を読んだ。食べ物の質と価格にはトレードオフがあって、安い食べ物を求めると味なり安全性なりにしわ寄せが来るという話。漬物、納豆、豆腐、伝統野菜、ネギ、牛肉、豚肉、ハム、卵、牛乳、ラーメン、ハンバーガー、山菜そば、椎茸、お酢について、お勧めの食材を紹介しながら、それらが今スーパーで売られているような価格では到底成り立たない事を説明していく。まあ、至極尤もな話だ。今は消費者の力が強すぎるという。

でも、じゃあ消費者がもっと財布のヒモを緩めて生産者と消費者の力関係が均衡すれば両者ハッピーな適正価格が実現するかというと、それはちょっと楽観的すぎるような気がする。なんなれば消費者には適正価格を正確に知る術はなく(適正価格を決めるのに必要な生産にかかるコストは生産者だけが知っている)、例えば適正価格よりわずかに高い価格があったとして、消費者はそのわずかな損失をそれと知らず受け入れるだろう一方、生産者は広く薄く利益を集めて大儲け、という可能性があるからだ。消費者の側が、このような事態をどうしても受け入れたくないのなら、採りうる方法は二つじゃなかろうか。一つ目はとにかく安さだけを基準に購入の意思決定するという方法。こうすれば、生産者はギリギリまで価格を下げざるを得ないが、少なくとも価格と質が低い点ながらも見合うという状態は達成される。これが現状だな。で、この現状がダメだというなら、二つ目の方法になる。ギリギリ安値を追求するのでなければどうしても適正価格からのずれが生じるが、この事と生産者丸儲けが生じない事の両立は、生産者の規模が小さいことで可能になる。だから、規模の小さな生産者を選んで高い価格を払えばよい気がする。

別の言い方をすると、生産者は適正価格を知っているのだから、もしそれ以上の値段で売っているのなら、規模を拡大すれば大儲けできるはず。でも、それをしていないということは、すなわち適正価格で売っていると言う事を意味するはずだ。消費者としては、適正価格を知ることはできなくても、だれが適正価格を提示しているかは知ることができる。そんなに間違った推論ではないと思うがどうだろう?

ところで、消費者は適正価格を正確に知る事はできないと私は思っているけれども、この本の中に書かれてあるように、例えば漬物を自分で作ってみる事でスーパーで提示される安い価格がいかにありえないかを理解する事ができるというのは、全くその通りだと思う。この視点は重要だと思うので、私もゼミあたりで取り入れてみても良いかもしれない。漬物つけたりハム作ったりするの。

それはともかく、この著者さんは学生時代に畑サークルを作ってキャンパスの空き地を開墾して回って野菜を作っていたらしい。もう親近感ありまくり。

日本の「食」は安すぎる 「無添加」で「日持ちする弁当」はあり得ない (講談社+α新書)

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