海の底には何がある

これは日記だ。ブログじゃない。

さじ加減

ここ10日くらい(正確に言うと、旅先から帰る途中にうっかり飛行機を乗り過ごしてしまい、丸一日友人のうちに滞在させてもらったときに書き始めて以来だから11日目)一日中コンピューターの前に座ってうんうんうなりながら文章を書いている。もう、三行書いては二行削る。人生はワンツーパンチである。


いや、決して作家稼業というような立派なものではなく、私が書いているのはクモの捕食行動についての論文なのだが、こんないわゆる自然科学分野の論文といえども、立派な文章書きの作業であって、より良い言葉より良い表現を求めてあーでもないこーでもないとやっているのだ。しかも、母国語ではない言葉で書かねばならないので、そもそもどうすれば良くなるのか自分でもよくわからないまま作業しているわけで、効率悪いことはなはだしい。


科学論文というと、まるで厳密な論理・形式に従って書くべきものであるかのように思われるかもしれないが、それは必ずしもそうではない。少なくとも私にとって面白い論文は論理・形式に従っているように見えて、実はそこからぼろぼろとたくさんのものがこぼれ落ちてくるものだ。というか、論理・形式が破綻しかけているような部分に、こちらが想像力を働かせる余地が生まれてくるわけで、もしそのような部分がなければ、それは単なる情報伝達に過ぎないということになる。情報をただ受動的に受け取るだけなんて、そんなつまらないことはない。


書く側から言うと、形式をガチガチにすると情報を渡す効率は高まるのかもしれない。しかし、そうして渡された情報は本当に相手を励起する力があるのか?というところが問題というわけだ。論分数は多いけど、引用数が少なくていいのか?という。


というわけで、何事もさじ加減。


そこまではいいのだが、実際の作業では形式を固めつつ、同時に固めないように書こうとしてワンツーパンチというわけだ。ふえーん。面倒だよう。