海の底には何がある

これは日記だ。ブログじゃない。

テレビで観るほど簡単じゃない

昨日の「ジーン」では竹内結子がなにやらストップウォッチを持ってテントウムシと対峙していたわけだが、おそらく歩く速さでも測っているといったところであろう。しかしながら、現実の動物の行動研究では、歩く速さ一つ測るのも、簡単でないことがある。「歩く」とは一体どういうことかが判然としない場合があるからだ。

実は今、私もクモが網の上で歩く時の速さを映像データから測っている。というのは、クモの円い網というのは実は真ん丸ではなくて、上半分が小さくて下半分が大きいと言う非対称な形をしていることが一般的なのだが、その程度はクモの種類によって違っていて、その違いが歩く速さと関係していると考えられるからなのである。

ここで、餌までの距離とたどり着くまでの時間を計って割り算すれば、速さがわかるかと言うとさにあらず。実はクモが網の上を動いている時、彼女らは単に移動しているのではなく、歩きながら餌の場所を知ろうとしている。糸の上を伝わる振動を検知して世界を認識しているクモは、餌に向かうときにしばしば自ら糸を揺らし、その振動を「聞く」ことで餌の正確な位置を探すのである。であるから、歩く速さを知ろうと思えば、移動にかかった時間から餌を探すために使われる時間を引かなくてはならないのだが、いつからいつまでが餌を探している時間であるのかがクリアーカットには見えてこない。そこでビデオのフレーム毎にクモの頭の位置を計測し、フレーム間の位置のずれがこちらが想定した閾値よりも大きくない時を、餌探しの時間であるということにしているのである。思えば大変に恣意的なことだ。

このように動物行動の研究では、そもそも行動をどうやって定義するか、と言うところに難しさがある場合があって、これは実は行動学の重要な特徴の一つなのだと私は思っている。。。なんて、珍しく真面目に語っちゃってどうしようと言うのでしょう私は?