海の底には何がある

これは日記だ。ブログじゃない。

背景も見てみよう

今月の初めに動物行動の映像データベースにコラムを書いた。「たまには背景も見てみよう」というタイトルで、動画には色々情報が含まれていて、撮影者も気が付いていないような事も結構あるので、主題だけではなくて後ろに映っているものも見てみると面白いよ、という趣旨。


そんな今日Wired Newsに研究報告「東洋人と西洋人は世界の見方が異なる」という記事が載っていた。で著者のページを覗いてみたら、論文のPDFがあったので落として読む。


西洋人の考え方は分析的で、東洋人は全体を一体として理解しようとする傾向があるとよく言われる。これは単なる俗説というわけでも無いらしく、そのような実験的な証拠もあがっているらしい。この研究でも、ある対象物が背景と一緒に写っている写真を短時間被験者に見せて、その後背景だけを別のものに変えた写真を再び見せて、その対象物を見た事があるかを尋ねてみたそうだ。背景が別のものになる事によって、正解率が下がるのだけど、その下がり方は西洋人よりも東洋人(この研究では中国人)の方が大きいらしいのだな。つまり、東洋人は物を見たときに、対象物と背景を結合して記憶する傾向が西洋人より強いという事で、まあこれは文化的な影響なのだろうと(遺伝的な影響は既に否定されているのだろうか?)。で、この様な結果は、これまでの知見の再現という事らしく、今回の研究のウリは、じゃあ何かを見て記憶し思い出す、という一連のプロセスのうち、文化の影響はどこに表れているだろう?ということである。ということで、写真を見せたときの被験者の眼球の動きを観察して、どこを注視していたかを調べてみたら、やはり中国人のほうが西洋人よりも背景をより強く注視していたらしい。

このような何となく感覚的にわかっていることについて、うまく実験を組んで数値的に証明するというのは面白いものである。それにしても、無意識な眼球の動きにまで(遺伝的か文化的かはともかくとして)出自によって影響を受けているわけで、私の心にもたくさんの目に見えない制約があるんだろうなあと感じ入る。だから、と飛躍するが、自分の心は自分のものだ!なんてシャカリキになる事は無くて、適当に心をたゆたわせているのが吉というものであろうよ。


それはともかく、まあ何というか私の書いたコラムはとっても東洋的だったのであるなあ、と、そういう話。しかし、背景を見ないんじゃあ折角の動画も魅力半減。というか、私らが動物行動の映像データベースに感じている面白みってひょっとして西洋の人には理解しにくかったりするの?


確かMぺさんがハンガリーでデータベースの発表をするのは明日だったっけ。