学会中に「絶望の裁判所」を読んだ。元裁判官が、日本の裁判所システムが官僚制度にいかに蝕まれており国民のためになっていないかを自らの経験に基づき告発した本。前任校で現代法学部と言うところにいた以外、司法とは全く無縁に生きてきた当方としては、この本に書かれている事のあれこれはあまりにひどく、にわかに本当とは思えない部分もあるけれども、一方で何人か顔のちらつく人もいたりして、ああいう人たちがすべてを占める組織っちゃあ、そりゃ悪夢みたいなものかとも思われる。それにしても、人事をてこにした上からの統制とそれに下からへつらう動きが合わさってできる異論排除の強烈さってのは、裁判所に限らず身近な社会のそこここに見られるじゃないかよなあ、と思いながら読んでいたら、最後の最後で著者も同じ事を書いていて同意する。著者によると学者は自由主義者なものだそうだが、そうなると私もその一人なのであって、そりゃあ日本社会に居心地が悪いはずだ。ところで、著者は学者の資質を持った裁判官と自任されているが、この本を読む限り、学者というもののあり方が法学分野と私の知る分野とは全く異なっている事がよくわかるという。まあしかし、この本に書かれている怒りの大きさは本物であって、そのエネルギーだけで最後まで読む事のできる書であるよ。
- 作者: 瀬木比呂志
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2014/02/19
- メディア: 新書
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