「経済政策で人は死ぬか?:公衆衛生学から見た不況対策」を読んだ。大恐慌時とリーマンショック時のアメリカ、ソビエト崩壊、アジア通貨危機、アイルランドの金融恐慌、ギリシャの粉飾財政発覚後の危機等を題材に、不況時の経済政策によって、人の生命・健康に大きな違いが出ることを豊富なデータをもとに示した本。要は不況下であっても医療・福祉・失業対策にお金をケチるな、という結論だ。そうしない国では、不況が長引き死亡率が上がり医療費が増大するという。これだけたくさんの証拠が積まれるのだから、緊縮財政の悪影響については確実性が高いのであろう。一方、今の日本では、シバキ主義が猖獗を極めていて、この本が警告する最悪の政策を取っているように思われる。早く方針転換すべき。で、著者によると、これだけ実証的に緊縮政策の不利益が示されているにもかかわらず、いまだにこの方針を取る政府が現れるのは、イデオロギーに政策が支配されているからだという。新自由主義はファナティックで狂信的なイデオロギーの虜になってるという感じか。
2007年にカリフォルニアのある町で西ナイル熱が流行したのは、不況で住宅が差し押さえられ持ち主がいなくなって、管理されなくなったプールがボウフラの発生源になったからだ、というエピソードが興味深かった。あと、ジェフリーサックスを批判しているところも私的にはヒット。昔まだ今より知識が少なかった頃にこの人の本を読んで、その能天気さになんか釈然としなかったことを覚えているのだけど、その時には、うまくその違和感を言葉にできなかったものだ。だけど、その直感にはちゃんと理由があったんだな、と。
- 作者: デヴィッドスタックラー,サンジェイバス,橘明美,臼井美子
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2014/10/15
- メディア: 単行本
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