海の底には何がある

これは日記だ。ブログじゃない。

クモと真剣勝負

最近、クモを相手に実験している。網にハナアブをかけて、クモが襲いに来て餌に到達する寸前にハナアブを網から引き離すという操作を一日に5回行なっている。こうして、クモに周囲に餌がたくさんあると思わせて、翌日の網の大きさや網の目の細かさがどう変わるかを調べるのである。もし、このとき餌を食わせてしまうと、腹が脹れたから網の大きさを変えたのか、餌が周りにあるという期待に基づいて網の大きさを変えたのか区別できなくなってしまう。


で、ハナアブを冷蔵庫でちょっとだけ冷やして動きを止めて、ピンセットで翅を一枚だけつまんで網にそっとかける。いつでも引き離せるようにピンセットは翅をつまんだままにしているので、クモはどうもいつもと勝手が違うとでも言うように恐る恐る近づいてくる。で、時には餌があるのに気がついているのに知らんふりを決め込むのだ。


こうなると私は困ってしまって、ピンセットを放して自然な状態だとクモが感じられるようにする。そうするとそのうちにクモも警戒心が解けて餌に襲いかかるわけだが、ここが私とクモの真剣勝負である。クモが走りだして餌にたどり着くまでに、ピンセットで小さなハナアブをクモが走っているために大きく揺れる網の上からつまみ上げなくてはならない。一匹のクモで実験するために、あらかじめ生理条件を整えるために2週間ほどの時間がかかっている。失敗するわけにはいかない。息を殺して網に向かい合うのである。


この緊張感、割と楽しい。