海の底には何がある

これは日記だ。ブログじゃない。

ブラディ・サンデー

スカパのスターチャンネルでは、「オススメ!掘り出シネマ」という、ビデオスルー作品をおそらくは安く買って放送するコーナーがあって、私は所詮安かろう悪かろうと決め込んでおりこれまで真面目に見た事がないのである。それが、この土曜日にふとスターチャンネルをつけたら、翌日の掘り出シネマの予告をやっていて、それが「ブラディ・サンデー」というアイルランド血の日曜日についての作品だったのである。で、ワンカット見た瞬間に私は画面にくぎ付けになり、こ、こ、これは!と思って翌日の放送を録画して(放送日には風邪で臥せっていた)昨日見たのである。

この事件は、アイルランドのデリー市で、公民権運動のために平和裏にデモを行っていたカトリック系の市民に軍が発砲し14人が殺害されたものである。で、映画では、事件の前夜から当日にかけての経緯を、デモのリーダーである下院議員と殺害される一人の若者を中心に、ドキュメンタリータッチで描いている。全編を通じて画面には緊張感が張りつめ(揺れるカメラと頻繁に繰り返されるフェードイン・アウトが効果的)一時たりと緩む事なく、ラストの下院議員の事件後の記者会見に流れ込むのである。そこで語られる「これで公民権運動は死んだ。そしてIRAが最大の勝利を収めたのだ。今夜デリーの若者は続々とIRAに参加するだろう」というセリフは、否応なく今の世界の状況を思い起こさせる(ただし、この映画が作られたのは2002年)。そして、エンドタイトルと共にU2の歌が流れ、ボノの悲痛な声はタイトルが終わり画面に何も映らなくなったあともしばらく続く。見終わってどっしり重たいものが残る作品である。

なぜこんな大傑作がビデオスルーなのかと調べてみたら、ベルリン国際映画祭金熊賞をとっており、サンダンス映画祭でもグランプリだそうである。ちゃんと評価する人は評価しているということだ。日本でももっと多くの人に見られるべきだと思う。あと、ビデオスルーだからと言ってなめてかかってはいけない>私


台風一過。フェーン現象らしくて気温が高いが、乾燥していて、北向きでこんな日でも30度を越えない私の研究室は過ごしやすい。日が落ちればさらに過ごしやすく、今日もまだエアコン無しで暮らせている幸せ。