海の底には何がある

これは日記だ。ブログじゃない。

大阪で生まれたオッサン

昨日読んだもう一冊が「プリンセス・トヨトミ」。そういえばいわゆる小説を読まなくなって久しい。文学をよく解さぬ私にとって小説は楽しみのために読むものなのだけど、近頃は所詮お話と感じる気持ちが強くなってきて、読んでもあまり楽しさを覚えなくなってきていたのだな。年のせいだろうか。覚えている限りで、村上春樹をいくつかと新ファウンデーションくらいだろうかここ5年ほどで読んだのは。で、プリンセス・トヨトミだけれど、そんな感受性の枯渇してしまった私が、読み始めたらもう止らなくなって、一気に読み切ってしまったほど夢中になってしまった。そもそもは、こないだ大阪城に行った後にヨメサンが友達から借りてきたものがウチに転がっていたのを何の気なしに読み始めたのがきっかけ(いやまあ、ちょっと前に公開していた映画の予告編が妙に面白そうだったので見ようかなと思った事があるわけで、全く興味が無かったわけでもなかったのだけど)。それがまあそこは私も大阪で生まれて育ったオッサンであって、やはりご他聞に漏れず太閤さん贔屓で、子供の頃は真田幸村の活躍に胸躍らせたり大阪の陣後の徳川の所業に憤ったりした口だ。実は大阪に豊臣家にまつわる秘密が隠されてるなんて話を読むとそりゃあ盛り上がる。しかもその秘密を持つに至った大阪の町人たちの心の動き方、お上への対し方というのが、大変共感できる。イヤ私も大阪の人だからね。さらに、この作品が読んで爽やかなのが、少数者だったり立場の違うものを「お前変わってんなあ」とか言いながら、スッと受け入れる事を良しとしているところ。今はともかくとして、少なくとも私の知っていた大阪はそういう雰囲気を持っていたところだった。それが良いところだったはず。ということで、今こそその姿勢が必要なんだよ、と訴えたい。

プリンセス・トヨトミ (文春文庫)

プリンセス・トヨトミ (文春文庫)