海の底には何がある

これは日記だ。ブログじゃない。

夏の陣

ウチの町では駅前農地を高層マンションを中心とした住宅地に変えてしまえという「開発」計画があって、今どき駅前だからといって農地を住宅地に変えることはないだろうということと、ウチがこの町に移り住んできたのは交通の便が良いのに自然が残っているからでその象徴だったのが駅前農地であるということと、あとはいろんな成り行きから、計画に反対する活動に参加するようになった。思い起こせば二年前に署名活動を始めて、その過程で議会のあまりのレベルの低さにこんな人たちに町のかじ取りを委ねている現実に空恐ろしくなって翌年ヨメサンが議員になったり町長選挙の応援やったり、講演会開いて住民の関心を高めたり、当選なった新町長が住民参加のまちづくりを進める過程で今年の初めに開いた、計画に関する説明会に参加する人たちと作戦練ったり、意見書書いたりしているうちに、計画の進行が少し遅れはじめたのがこの春だ。これに抗して議会では、多数派が議会ボイコットするというわけのわからん事件があって、そのせいかまた計画は進行し始めたので、マイファームの社長さんに講演してもらったりして再び住民の関心を高めたり、ちょうど情報公開請求の不服審査で勝利して入手した開発後の高層マンションのイメージ図を関心のある人に見せて回ったりしていたわけだ。で、今日から三日間、町では計画に関するタウンミーティングが開かれる。説明会では250人ほど集まった住民が、行政の要領の得ない説明に憤って紛糾したので、それを受けて、各回定員30人ほどの小さな集まりを6回開くという。小規模ならば紛糾もせず丁寧な説明が可能で、町長出席の元、住民を説得することができれば、あとはスムーズに開発に取り掛かれると、そういう目論見なのであろう。もうちょっと専門的なことを言うと、開発のためには市街化調整区域になっている農地を市街化区域にする必要があり、この線引きの変更の権限は府にあるので、町は線引きしたいと府に申し出て協議しながら法定の住民説明会やったり都市計画審議会開いたりといろんな手続きが必要なのである。で、その手続きにゴーサインを出す前にタウンミーティングで住民の理解を得ようというわけだな。で、こちらとしてはゴーサインが出ちゃうと引き返すのに越えなきゃいけないハードルがより高くなるので、ここで簡単に納得したと思われてはいけないわけ。

ってか、実際問題として、最初に書いたようにこちらには、いくら駅前だからといって、今どき住宅大量に供給してどうするっちゅうねん、という根本的な疑問がある。この土地区画整理事業という手法を使うこの計画では、開発に要する資金のうち公金が占めるのは一部であるとはいえ、まったくのゼロになるわけではない。さらに、開発すると2000人規模を収容する住宅ができるわけで、これを埋める人が町内から移動するのであれば、既存住宅地に空き家がボコボコできてスポンジ化が生じるし、町外から引っ越してくるのであればただでさえ待機児童が大量にいるウチの町の子育て環境は地に落ちるし、小学校増築とかなると必要のない財政支出を強いられることになるわけだ。また、開発地域は線路と山に挟まれた細長い地域で、そこから線路を越えるための道が現状極めて貧弱なので、そこに2000人の人が住めばひどい交通渋滞が起こるのは避けられない。ということで、開発がもし進めば、様々な問題が発生することはもう明らかなのだな。こんな状況下で計画を進めるためには、これら問題から生じるコストを上回る公益が必要だが、その公益について行政は筋の通った説明をこれまで一度もしてこなかったのだな。最初に言っていたのは乱開発防止なのだが、それなら開発行為が原則禁じられる市街化調整区域を開発可能な市街化区域に変える意味がわからん。次に出てきたスプロール化の防止は、市街地を拡げようとしてるのに何言うてんねん、となる。さらにコンパクトシティの実現というのも出てきたが、そもそもウチの町は数km四方の狭い地域に市街地が集中していて既にコンパクトシティなのだ。一方、その地域で農地の面倒を見ている人が高齢化して後継者もいないから支援が必要、というのは、例えば町工場のオッチャンが高齢化して後継者がいない時に支援しないでしょ、という話になる。農地には公益性があるから、というなら農地のまま維持する手だてを打つべきだ。マンション建てて人口減少のスピードを小さくするんだというのは、全体のパイが縮小している中で自治体間で住民獲得競争するなんてムダじゃん、ということになり、まあ確かにそれは町益といえるかもしれないけれど、本当の意味での公益ではないわな。人口減少を食い止めたければ、出生率を上げる施策を取るべきだし。ということで、まあこういうことを訴えて、農地を維持するとか言う以前に、この計画やばすぎなので、止めておかないと住民がひどい目に遭いそうだという。

で、3日間で1日2回計6回開かれる会の最初の回に、私とヨメサンは乗り込んでいったのだな。マジこれ止める。会場の公民館に着いてみると、私らは参加者20人の最後の数人で、既に来ていた人と町長含む行政10人がパイプイスに車座に座っていてビビる。うわー入りにくい雰囲気や。で、空いてる席も散り散りバラバラで、困ったなと思ってると気を効かせてくれた人がいてヨメサンと隣同士に座ることができた。他の参加者を見ると、知ってる人は半分くらいか。開発が進むと金銭的利益を得る人も町には当然いるわけでそういう人が賛成意見を言うのはこれは当然の事(ただポイントは、その賛成意見は私益に基づくのですよね?都市計画を変更するには公益が必要だけどそれってどう理解すればいいんですかね?ということになるのだけど、そのような論点が理解されるかどうかは覚束ない)。一方、世の中にはお上に反対する人がとにかくキライという人もいて、そういう人もタウンミーティングに参加して議論を撹乱してくることもあるだろうなあと予想していて、知らない人が多いとやっぱ緊張するわけよ。冷静に話できるかなって。で、会が始まり、町長がまず40分弱説明。で、これ、ほとんど内容的に意味が薄かったので、それはスルーで、さあやっと意見交換の始まりだ。で、私としては、一番大事なのは、この計画の公益性は何か?ということだと思ったので初っぱなにそれを述べたのだけど、行政から回答がもらえないうちに、参加者がどんどんどんどん質問や意見を述べ続けるので、質問が流れていくわけ。まあいいや、あとで「回答してくれへんかったやんけ」と言えればこっち小さなポイント得られるしさ、と思ってそのままスルーして、話が細かいことに流れ出したので、町のいう開発後の計画人口見通しの甘さについてや、調整池の容量計算のざっくり度合いについて、ひとくさりぶっていると、なんか男性がこちらにからんでくる。この方、最初っからなんか意図がわからない発言を何度もしていて、ピンボケな人だなあ、とか思ってたんだけど、ついにここに来てその方が「さっきから聞いていると、発言がそもそも論ばかりだ。もう開発はするんでしょ。私はその中身が知りたいのに、町はちゃんとこの会を仕切れ」とか言い出す。すると行政は「説明会の反省も踏まえて、自由に皆さんに意見を言ってもらおうと思ってます」みたいなことをおっしゃる。あ、オレ的にはそういう行政に好感度アップね。よかった紛糾した説明会から学んでるじゃん。変わろうとしてるじゃん、ってね。なのにその方不服を述べ出したので、そりゃさすがに変だろうよ、と、私を含め複数が「いやそれはみんな聞きたいことを聞けばいいので、中身を聞きたいのであればあなたがそういう質問をすればいいのでは?」的なことを言ったわけ。そしたらその人、席蹴って(文学的な表現)帰っちゃった。びっくり。最後までいて話聞いててほしかったのになあ。で、その人以外は基本計画にネガティブな人ばかりだったので、もうあとは行政フルボッコの会になる。まあ元々の計画が無理なものなので、フルボッコになるのはやむをえない。ただ、説明会の時のように紛糾にならなかったのは、行政の対応が前回より進歩していて、答える時はちゃんと答え、答えられない時は黙っているというやりかたで、こちらの質問と全然違う答えでごまかすと言うことをしなかったからだな。で、14時から始まった会、16時終了予定だったところ、17時までかかって、さすがにこちらも言うことがつきてきたので終了と相成る。で、パイプイス片づけるのを手伝っていると、行政のエライ人から「抑えていただいてありがとうございます」とか言われる。そんなつもり1ミリもなかったので面喰らうが、紛糾しなくて良かったと言う安堵の現れなのだろうと解釈する。で、帰宅17時半。今日のタウンミーティング2回目が19時からあるので、その参加者向けに私らの会で出た発言について、ヨメサンが取ってたメモを元にざっくりまとめて知人たちに向けて送付。後はまかせた。