海の底には何がある

これは日記だ。ブログじゃない。

後ろ向き

快晴。レンタカーを借りて稲佐山に。4年間通った馴染みのフィールドはいつものように静かで森の薫りがした。ゴミグモは律義に去年と同じ場所にいて、あっという間に予定の数採集する。このクモは脅かしても網から落ちずにゴミリボンの上でじっとしている事が多いので、手の届かないところでも木の棒に網をくっつけてクモを採る事ができるので楽だ。しかし、まだオスがちょろちょろ見られていたのが心配の種。これはすなわち現在繁殖シーズンの最中ということで、ひょっとして恋の邪魔をしているのでは。実験が終わったらできるだけ早く採集個体(全てメス)をフィールドに戻すつもりだけど、何か悪影響がでなければよいのだが。

午後は前任校の裏山で採集なので、折角なのでキャンパスに顔を出す。会った学生が「ん?」と言う顔を一瞬してその後びっくり顔になるのを眺めたり「先生、東京から逃げてきたんでしょ」とか言われるのは愉しい。ひとしきりいろんな人の近況を聞き、裏山へ。

こちらも無事に済みレンタカーを返しに駅に戻る途中、ふと気がつくと昔の我が家への帰り道を走っていた。二ヶ月くらいしか過ぎてないので体が覚えているって言うかなんというか、というのは言い訳で、去った後もう戻れないのにウジウジ家を見に行ったりするのは悪い癖だな。

それはともかく、ウチの前まで着いて私が使っていたスペースに赤い車がとまりベランダに衛星アンテナが二本ついているのを眺めて、案の定切なくなったので宿まで戻った。宿はJRの駅ビルの中のホテル。晩ご飯を食べにビルの中の店に入ったら二年生の学生がバイトしていてちょっと恥ずかしい。去年はワルぶってた印象だった彼が真面目に働いているのを眺めながら、(おそらく高校生活の中で)そんな風に振る舞わざるをえなかった彼の心の中を想像してみる。

駅ビルの中には例のシネコン。映画を見てそのままベッドになだれ込むために、ここのホテルにしたのだ。食事を終えてすぐに「ロスト・イン・トランスレーション」。あまり期待してなかったのだけど、心動かされる。なんせ馴染みの土地とはいえ旅先のホテルで一人の夜に被ってくる。というか、見終わっていつもの癖で家に帰ろうとうっかり思って切なくなったり。

ええいここは景気漬けにレイトショーで「ドーン・オブ・ザ・デッド」。食い合わせ悪そうだがまあ良いじゃないか。パワフルで面白かった。