海の底には何がある

これは日記だ。ブログじゃない。

それはつまり荘園制度

「ヒトは環境を壊す動物である」小田亮ISBN:4480061525。小田さんは霊長類の行動学を専門にされていて、現在の職場では環境関連の講義をやっておられるとか。行動生態学進化心理学の素養のある人が環境問題に何か言おうと思ったら、こういうストーリーにならざるを得ないだろうという本だ。かくいう私も同じようなラインで講義をしていたりする。

で、共有地の悲劇をなぜ避ける事ができないのか?という点において、進化心理学の立場から「そもそも人の心はそのような問題を解くために進化してきたのではない」とするところがこの本のポイントだ。この本の中ではロビン・ダンバーの「ヒトの脳が扱う事のできる集団サイズは150人程度」という説から、地球規模で拡がる環境問題に人の心は対処しきれない、と論が拡がっている。この論は非常に魅力的だと思う。私たちは、地球の裏側で木が切り倒されたかどうかなんかよりも、同僚の給料がどのくらい自分より高いかの方がずっと気になるのだが、そのような心の動きが積み重なって環境問題が生じている、というわけだ。

であれば、環境問題の解決には、私たちの認知スケールと問題のスケールを一意させる事が重要だということになる。小田さんはITの発達が私たちの環境認知を拡げてくれることに希望があるというが、私は逆だと思う。問題を認知能力の範囲内に落とし込むのだ。つまり世界を150人とは言わないが、今よりもっと小さな単位に分割して、それぞれを自律性のある閉じた有限系にする。そうすればコミュニティーの構成員の利害関係が重なり合うようになって共有地の悲劇性は回避されるのではなかろうか。

しかし、どうでもいいが最近小田さん大活躍である。去年の札幌の飲み会で実は同席してたのだけど、お話させてもらってれば良かったよ。