海の底には何がある

これは日記だ。ブログじゃない。

女王陛下の組織にはいつもお世話に

ウェールズに遊ぶのも今日までで、午前中はカーディフ湾を巡る遊覧船に乗る。で、乗ってる時に、何か奇妙なものを感じるよな、と、H賀さんと話し合う。というのも、湾に出口がないのよ。どうみても堤防と水門で締め切られている。そんなことする必要ない。おかしいって思うわけね。そして、船で進んでいるとある場所には、連続して水面が泡立っている場所がいくつも続くポイントがある。これも変だ。で、いろいろ探っているうちに、どうやらカーディフ湾というのは人工のものであるということに気がつく2人。なんでも、現在湾になっているところは本来広大な干潟だったらしく、それを20世紀末に締め切って水を溜めたんだそうな。そのための水門かよ!で、川から流れ込む有機物を分解するために水底を攪拌するためのパイプでも埋めててブクブクやってるんじゃんということに気づく。そういえば、よく見るとその辺で浚渫船が底をさらってもいる。すげー、日本だったら干潟は全部埋めるところ、逆に水張りますか。すごい発想やな。干潟が失われるのは一緒やけどな。それはともかく、こんなふうに周りを見て、ついつい謎を探して答えを探って喜んでしまうのは、マクロ生物学とミクロ生物学の垣根を超えて、研究者の職業病であるな。っていうか、そういう本来の意味での研究者と旅行する楽しみってこういうところだよね。と、嬉しくなってカーディフともお別れ。今日のうちにヒースローに戻って明日の帰国便に備えるのである。で、折角なので、その前にウィンザー城に行きましょうとH賀さんに案内してもらい、16時最終入場のところ15:50に滑り込む。ロイヤルファミリーは避暑でいないらしいのだけど。で、連れて行ってもらうばかりで、どんなところか私はあんまり良くわかってなかったんだけど、中に入ったらその豪華さに圧倒される。リスボンにおけるカトリックの豪華さとはまた違うもので、あっちが宗教的で観念的な部分が強かったことと、どこか贅沢をすることそのものが目的の贅沢だったように思われるのに対して、こちらの豪華さは、例えば食器だったり武器だったり外交に資するためのものだったりと機能を持った豪華さなのよね。なるほどこれが彼我の帝国の命運を分けたわけね、と思うのね。まあ私も王立協会には何度か世話になってるし、この豪華さの残り火の恩恵を受けてるんだなあと思うと、まあ不思議な感じ。ということで、これも面白かった。で、空港に戻ってレンタカーを返し、H賀さんに導かれるまま空港近くのホテルに。リスボンみたいに歩いていけるわけじゃないので、移動手段が必要だけど、H賀さんが全部教えてくれて無問題。ヒースローの近辺は公共交通機関が無料のゾーンがあるのね。へー。で、ホテルで英国最後の、っていうか二週間の長いヨーロッパ滞在の晩御飯。この三日間、H賀さんとはいろんなことを喋り捲って大変有意義だったし、とても世話になったので、丁寧にお礼を言う。明日は私が早いので、これでお別れ。ありがとうございました。お礼に帰国したら拙著を送ろうと思うのよ(いらんかもしれんけど)。