海の底には何がある

これは日記だ。ブログじゃない。

試験は暗記で乗り切る信仰

今日は気が重いのである。この国の近年の教育政策のうち最も愚劣なものの1つであろう教員免許更新講習の担当を、今年は逃げきれなくて受けてしまって、今日がその日だからだ。まあ私がやるのは4時間分あるうちの1時間分だけでいいから、まだマシなのだけど。っていうか、現場の経験豊富な先生たちに私のようなものが教えるようなことは何もないのである。さあ困った。一方、講習で私とコンビを組むもう1人の教員は、もっと積極的。初等中等教育の先生に環境問題のことをうまく教えてもらうには、エネルギーのことを知ってもらうのが大事でしょう、とおっしゃる。そうかそれはごもっとも。前向きな姿勢に頭が下がります。しかし、オレ、エネルギーの専門家じゃないしどうしようかなあ、、、と思ったところでハッと気がつく。オレには薪ストーブネタがあるじゃないか。一度これで40分ほどの講演をしたこともあるし、その時の内容をもとに展開すれば一コマくらい持つんじゃね?と思ったわけだな。とか言ってると直前になって、どうやら講習の中では試験をやらなければならないことがわかる。試験?オレ1コマしかしゃべらないのにその中で試験しなきゃいけないの?しょーもなー、なんかほんと形骸化したことやらせるのだなあ。どう考えてもこの目的は教員イジメじゃんかなあ、さすがは天下の大愚策である。で、こういう愚策にまともに乗っていくのはよろしくないので、私としては、そうか試験というか、自分担当のコマにおけるメインのクエスチョンを最初に提示しておいて、それを講習の中で解いて行く形式で授業したらいいんやん、と思いつく。で、試験はそのクエスチョンに対する答えをかいてもらえばいいわけや。つうことで、日本全国の家庭の暖房を薪ストーブでまかなうことは可能か?というクエスチョンを解くことで1コマやることを決定。どうやってこれを解くかというと、まずウチの薪ストーブの性能から1時間あたりの発生熱量を計算し、稼働時間を掛け合わせて薪の単位重量あたりの熱量を使って、1戸の家庭で年間に必要となる薪の量を算出する。そしてそれに日本の世帯数をかければ、全世帯の暖房を薪でまかなう時の必要量がでるわけ。で、私はそれを2-3億㎥程度と推定していたわけだけど、講習では受講生に計算に必要な数値を調べてもらいながらアドリブで推定したら1.4億㎥となった。まあどのみちフェルミ推定なのだからこのくらいの誤差は出よう。で、じゃあこの量を日本の国土でまかなえるか?という話になるのだけど現在の日本の森林の現存量から推定した木質バイオマスの年間成長量というのが森林統計に掲載されているので、それを持ってくると、これが7000万㎥だということがわかる。つうことで、上の、可能か?という問いには不可能だ、という答えになりますね。という話をすると1コマ埋るわけである。で、形式的に試験やらなきゃならないわけで、今言った話を解答用紙にかいてくだされば良いんですよ、ということを言って書いてもらう。で、採点すると、少なからぬ人が計算過程をまったく書かずに結論だけ書いていて、ああああああ、小学生でもできるはずのかけ算割り算だけでおこなうフェルミ推定でも敷居の高いものなのかあああああ、とがく然とする。目の前で考え方の理路とか計算過程とか全部見せたのにそれを書かないってのは大変不思議。いややっぱりこの計算ができないとか言うはずはないので、これはひょっとして、プロセスを書く必要ないと思っている人がこの中にいるってことかもしれん。それはよくないなー、そうと知ってればもっと別のことを訴えたのになー、と思った。