海の底には何がある

これは日記だ。ブログじゃない。

マシューの成熟

そういえばすっかり書くのを忘れていたけど、先週の月曜日の夜にシネコンに行っていたのだった。「ARGYLLE/アーガイル」。登場人物が勝手に動きだすってあるよね、という話。いやー、なんか面白いのかねこれ?とオッカナビックリで見に行ったのだけど、強烈に面白かった。マシュー・ヴォーンのマスターピースではないかこれ?なんといっても、眠たそうな目でダサい衣装によたよたの体、というどう見ても冴えないオッサンだけど実は優秀なスパイという設定の勝利。アラカンとしてはもう応援せざるを得ない。しかも女性側の主人公も下半身でっぷりであることを隠そうともしないわけ。でも、この二人が荒唐無稽な大暴れをするわけですよ。控えめに言ってもサイコーでしょ。で、また脚本がきっちりきっちり伏線をひいては回収するという丁寧なお仕事で、私はこういうの最大限評価するわけ。もちろんお話としてはデタラメで御都合主義なんだけど、でもそれがお話というもので、伏線を引きさえすればすべての御都合主義は御都合主義の地平を乗り越えていくものであるよ。素晴らしい。で、マシュー・ボーンでスパイ物というと、キングスメンなのだが、あの第1作で頭ポンポンするどぎつい色で構成されたシーンがあって、あれを見た時に、斬新な絵で感心するけどそういう表現をする必然性は薄いよな、単にやりたかっただけってなら品がないよな、と思ったものです。で、今作でも同じようなどぎついシーンがあって、でも今回はきちんとエモーションと対応していて、しかも、伏線の回収にもなっている。そこでのサム・ロックウェルの緩んだにやけ顔のアップを見て泣けてきましたよ私は。いやマジで泣ける。オッサンのその気持ちよ。つうことで、エモーションに裏打ちされたシーンこそ娯楽映画の背骨である!っていうか、オレ、マシュー・ヴォーンの監督作ほとんど見てるのね。お気に入りだったのか!