海の底には何がある

これは日記だ。ブログじゃない。

やっぱり「首をはねろ!」

ヨメサンが買っている「通販生活」を眺めていると、最近の童話事情について書いてあった。なんでも最近の童話はいろいろと昔と違っているらしい。


例えば、桃太郎の結末は鬼が改心して村の子供と鬼ごっこをして遊ぶバージョンがあるとか。それから、かちかち山ではおばあさんは殴られても死なず、たぬきはやっぱり最後に改心して謝るとか。さるかに合戦もしかり。カニのお母さんは死なずサルは改心する。そもそも「さるかに合戦」というタイトルさえ、いまや「さるかにばなし」に変えられているらしい。教育的配慮だとか。


しかしマレの「首をはねろ!」ISBN:4622049570、にもあるように、残酷性と言うのは童話の非常に重要な特質の一つである。死んだ母ガニからぞろぞろ這い出してくる子ガニや、おばあさんの入った汁を食べているタヌキがいない話からでは、エモーションも何も生まれてこなさそうだ。


記事の中では、親からの「暴力的だ」と言うクレームに対処した結果だと書いてあった。出版社としてはお客様は神様だ、ということなのかもしれないが、釈然としない。確かに童話に対してお金を払うのは親かもしれないが、本当の意味でのお客は読み手の子供のはず。子供に選ばせれば、オリジナルバージョンを好きだと言うような気がするのだが。そもそも子供って残酷なものだ。


教育に関わる部分では、お金を出す人=お客、とみなす勘違いには気をつけなきゃいけないと思う。大学人としての私も含めた自戒。


この話と関連するのだけど、最近「悪い事をしても謝れば済む」と考える人が若者に増えているような気がする。しかし、そもそも悪い事をするのは許されない事で、許されないからこそやってしまったら謝る以外に打つ手が無くなる、というのが本当のところのはず。しかるに、口当たりのよくなった最近の童話は、教育的配慮と言いながら間違った事を教えているのではなかろうか。「謝れば済むのだったら悪い事した方が得じゃん」って方向に人を誘導する結果になると思う。


とはいえ、全ての出版社がこんなふうな変更を施しているわけではないらしい。福音館書店ポプラ社は伝承に忠実なままで出版しているそうだ。さすが。