海の底には何がある

これは日記だ。ブログじゃない。

男子の本懐

「男のパスタ道」を読んだ。一冊丸ごとを費やして、美味しいペペロンチーノの作り方を追求した本。ただそれだけだ。だけど、これはレシピ本や料理本の類ではない。むしろ良くできた科学読み物と言える。アルデンテのコシを追求するため、小麦粉の炭水化物成分とタンパク成分を分離して別個に茹でて食感を確かめるところや、塩水でパスタを茹でるのは何故かを検証するところで幾つもの仮説を実験と(家族を使って二重盲検法!!)理論の両面から潰して行くところなど、痛快無比と言える。なんといっても、著者の通説をすべて疑ってかかる態度は見事であり(塩の投入がお湯の温度を上げるのではないことを検証するくだりはサイコー)、この本を読むと、科学的態度を構成する重要な柱の一つが懐疑心であることを再確認させられる。いや、最適茹で時間を探るため、30秒ごとに時間を変えて茹でたパスタを実際に食べて違いを探るところなど、人によってはバカバカしいと思われるところもたくさんあるかもしれない。しかし「男」というものには、もともと「バカ」の意が内包されているのだから、それを持ってこの本を難渋するのは無理筋と言える。むしろ、その突き抜けたバカバカしさに清々しさを感じようではないか、と私は言いたい。ムッチャ面白いですよこの本。