海の底には何がある

これは日記だ。ブログじゃない。

自由こそすべて

原稿関係の諸々が一段落ついて、一月半ほど前に手元に届いていた(いつもいつもありがとうございます)「不屈に生きるための名作文学講義」をやっと読むことができた。本書は以前にZ会のウェブサイトに掲載されていた連載をまとめて加筆修正したものということで、名作文学の読み方を中高校生でもわかるように書かれている。ということで、私みたいに文学のブの字もよくわからない人間でもスイスイ読めるのである。ブの字も知らない私とはいえ、そこは名作文学だからだいたいどんな話かはわかっているわけで、そういう知ってるんだか知らないんだかの微妙なラインにある物事について、大岡先生が思い掛けないエピソードなど交えて語ってくれるものだから、芸能人の内緒話を聞いたときのようなワクワク感とか持てるのよ。ゴシップ話も多いしね。

内容はというと、「ONE PIECE」から「宝島」に続く海賊話で始まる。で、私みたいなうっかりものは「ああそうか、この本は自由に関するものなんだ。海賊だし」と決めかかる。

すると次は「坊ちゃん」から「赤と黒」が出てきて、ここでは親の呪縛話になる。ここではむしろ自由よりも、自分ではどうしようもない運命性・歴史性のようなものが語られるわけで、私が勝手に見定めた「これは自由に関する本である」という思いはくるっと裏返される。

すると話題はルソーに移り、その章の副題がなんと「自由・平等・博愛」で、さらにさらにひっくり返される私である。やっぱりそうじゃん!!と思うと今度は島崎藤村をフックに国語の誕生と翻案小説の話になる。むむ、やっぱりこれは今の我々を呪縛することについての話ではないか。今の我々に過去の西洋社会との接触とその受容がいかに影響しているか、ということだからね。

と、賢しらに本書を読み解く私の試みもここまでである。このあとは、谷崎潤一郎のヘンタイ話と宮沢賢治の宗教性の話になって、このあたりの人間の「不思議さ」について、私のような凡庸な人間はただただぼう然とするしかなくなるのである。

すると最後の最後は「ピノキオ」で、これがまた「自由」についての話なのである。前振りというか対比物として「愛国心」が添えられて。ということで、やっぱり私としては、この本の少なくとも一つの柱は「自由」なんだと思いたいところだ。っていうか、そこが私にとって一番響くところなだけかもしれないけど。いやだけど、今の日本で暮らしていて普通の感受性を持っている人なら、自由の意義を若者に語ることは大切だと思うよね。うんそうに違いない。タイトルだって「不屈にいきるため」だし。

私の勝手な読み解きはともかくとして、和洋今昔いろんな話題が飛び交って、え?これとあれにそんな関係が?とか驚きもたくさん盛り込まれている本書、若い人だけじゃなくって、大人でも興味深く読めること請け合い。オススメです。