海の底には何がある

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ギンナガゴミグモの交尾器破壊行動

つうわけで、1/27に論文が公開されていました。ギンナガゴミグモの交尾器破壊について報告したものです。オスが交接時にメスの交尾器についている小さな突起である垂体を取り除く事を行う事が確認された3種目になります。で、既知の2種であるギンメッキゴミグモとキタコガネグモダマシとやっている事は同じなのですが、ギンナガの場合、交接時に交尾器が破壊にいたる確率が他の二種と比べると半分くらいとかなり成功率が低いというのが特徴のひとつ。で、もう1つの特徴が、交接済みのメスに二個体目のオスをあてがうと、既知の二種の場合、メスはオスの求愛を受け入れて交接しようとするところ、交尾器が破壊されているので接触するものの交接できないという事がおこるのだけれど、ギンナガの場合は、メスが求愛しているオスを攻撃して追っ払う事でほとんどの場合接触に至らないということなのです。つまり、既知の二種では交尾器破壊がメスの再交尾抑制に強く効いているところ、ギンナガでは交尾器破壊があってもなくてもメスの攻撃行動により多くの場合で再交尾が起こらないという違いがある事になります。一部交尾済みメスによる攻撃にも負けずに求愛を続けたオスであればメスが受け入れる事があり、その場合だけ交尾器破壊が再交尾抑制に効くのですが、そもそも破壊率が低いので、全体をみた時に交尾器破壊の効果は1割もないという。というわけで、今回の結果は、これまで言われていた「交尾器破壊はメスの再交尾抑制のために進化してきた」という説とは1貫しないものである、というのがポイントになります。他にも交尾器破壊をしているだろうと思われる種はいるので、もっと広範な種間比較をしていったほうが良いかもね、という。

Nakata, K. Association between external female genital mutilation and securing paternity in a spider. Ethology. 2021; 00: 1-6. https://doi.org/10.1111/eth.13136