海の底には何がある

これは日記だ。ブログじゃない。

文化生活

ナショナルシアターライブの「ベスト・オブ・エネミーズ」を見に梅田のステーションシネマに。ナショナルシアターライブとは、英国の舞台を映画館で上映して見せてくれるものとのこと。最近シネコンはコンサートの中継やったりいろいろ企画あるけどその手の一つらしい。で、本作は政治の時代1968年に始まったテレビの政治討論番組に題材を求めたもので、2人でやる朝まで生テレビみたいなものだと思えば良い。そういうものだから、最終的には罵詈雑言に終わるわけだが、当時はまだナイーブなのである。共和党民主党系の両討論者の互いが傷つくということになるわけだ。今なら討論者の誰1人としてこういうのを娯楽として恬として恥じないものだが、やはり昔は上品である。ってそういう話ではなく、このような結果になることを、番組を始めた誰1人として考えておらず、ただ単に後発の弱小TVネットワークであったABCが、苦境を脱するためある意味苦し紛れとして始めたこの企画が政治とメディアの関係を決定的に変えてしまう、ということを描いているのである。半世紀前の話だが、極めて現代的と言え、鑑賞している間いろんな考えが頭を渦巻かざるを得なかった。で、またこれが演劇だから、映画のように過剰な刺激はない。で、舞台にしろ小道具にしろ演技にしろ何しろ抽象性が高い。ということでここでも想像力の働く余地が大きく、さらに考えが渦巻くのである。演劇鑑賞とはかくも知的な営みだったか。こういうものを日本にいながら鑑賞できるのは大変ありがたい。俳優さんの中で私が知っているのは新スポックことザッカリー・クイントだけだったが、そのほかの人も含めてすべて名演で引き込まれる。そして舞台装置が秀逸で、二階建ての2階部分には包装ブースにもした小部屋が三つあって、中央の舞台を見下ろしていて、これらに自在に観客の注意を惹きつける間に、中央の舞台転換を行う見事な手際の良さよ。傑作。何度も見て細部に目を凝らしたい!と思ったのだけど、今回はアンコールということで大阪では一回限りの上映。配信は字幕がないし円盤もないらしい。口惜しいわー。