海の底には何がある

これは日記だ。ブログじゃない。

これぞ興行

熊本から長崎に向かうには、有明海をフェリーで渡るのが良い。航路にはいくつかあって、いつもは熊本港−島原を使うのだけど、長州港と国見を結ぶものもある。で、長州港というのは、三井グリーンランドという遊園地の近くにあって、三井グリーンランドの隣には、全国1000万のウルトラファンの聖地、ウルトラマンランドがあるのだ。なぜこんな九州の片田舎にそんな施設があるのかというと、私にもその理屈は全くわからない。とにかく、長崎時代から「この子が大きくなったら連れていこう」と思っていたのに、それを果たせぬまま上京した私たちが、この機会を逃さぬはずはない。というか、今回の旅の二大目的の一つだったりする。 

黒川温泉から今日はチャイルドシートの外れないフィットを駆って二時間強。あれに見えるはジェットビートルなり。ということで、車を止めて怪獣ブースカの人形に迎えられていると、遠くからアニメ声の女性のMCが聞こえてくる。どうやら着ぐるみショーが始まったところらしい。走ってホールに駆け込む私たち。すると、ダダーンと広く敷き詰められたマットの上にポツリポツリと座り寝転がる家族連れの姿、その数およそ20弱。大人はみんなビデオカメラを舞台に向けて、ウルトラセブンとガンダーの格闘を撮影している。遅れてきた私たちもゆっくりかぶり付きの席に陣取って、眺める事とする。整理券を持って並ばされ、満員の会場では前の人の頭で小さい子供には舞台が良く見えず、見えたとしてもホンの小さい姿だけであり、さらにフラッシュ撮影もビデオも禁止されるという、殺伐とした池袋のウルトラマンフェスティバルをくぐり抜けてきた私たちには、ここはまるで楽園である。着ぐるみがボロボロひび割れていたり、背景の書割りがどさ回りの芝居小屋みたいだったり、同時に四人以上のキャラクターが舞台に出てこないことなんて、全くもって瑣末な事である。マグマ星人もサービス旺盛に客席まで降りてきてくれて、下の子の眼前にサーベル突き刺してくれて、本気で怖がる下の子によそのお父さんお母さんたちと一緒に大受けするも楽し。舞台が終わると、当然のように子供たちと握手をして写真を撮ってくれるセブンとタロウ(さすがにメビウスは有料だったけど)。この、客の喜ぶ事なら何でもアリ感に興行の本質を見た西の果て。

お昼はウルトラ・デ・レストランという、まあゲレ食のようなところで、ウルトラマンの形に盛りつけられたカレーなどを食べる事になる。すると何やらお誕生日のお友達のために、コックの服をきたウルトラの父が現われてケーキを運んできてくれたりする。お約束のように関係ない他の席の人たちのところも回って写真かつ握手。そんなのポカンと見ている間に、食べ遅れて次のショーの冒頭を見逃す上の子であった。

もちろんサービス精神だけでは運営できないのであって、物品販売もある。ソフビもずらり。でも、ウチが買うのはお面である。縁日で売っているようなあれだ。で、これをつけた上の子、舞台の上に声援を送るようになった。仮面をかぶると、できなかったことができるようになる。分かり易すぎるぞ上の子よ。

で、フェリーに乗って海を渡り、愛野から橘湾沿いに走って、網場でS宮さんを拾ってから昔良く行った新大工の小さな割烹に入ったら、亭主がお亡くなりになったとかで代替わりしていた。ちょっと切ない。

長崎の宿は、稲佐山中腹のルークプラザホテル。フィールドに通っていた道の脇にあって、出入り口の見通しがあまり良くなくて何度かヒヤッとした事のある場所に、まさか自分が泊まろうとは。でも、入ってみると中は広く綺麗で夜景も素晴らしかった。ホクホクと眠りにつく。