海の底には何がある

これは日記だ。ブログじゃない。

なわばり

長崎には遊びに来たわけではない。ちゃんとクモを採って写真を撮るという目的があるのだ。仕事ですよ仕事。科研費を使うのです。というわけで今日はその本番。朝は濃い霧が発生していたのでうわーと思ったけど朝ご飯を食べているうちに晴れて素晴らしい。どうでもいいがJRホテルに泊まる時は朝ご飯はフロント前のロイホだったのだけど、駅ビルが一部取り壊されてそこもなくなっちゃった。代わりにアミュのうまやで食べられるのだけど1500円と聞いて怖じ気づき、マクドに行ってしまった。さてそんなわけでクモ採りだ。懐かしの稲佐山にバスで登る。なんかバス停も場所が変わっている。しかしどうでもいいけど、朝の長崎駅前のバスの本数ったらすごいよね。バンバン来てはバンバン出て行く。京都だと一台に乗降する人の数が多いから知らないけど、バスは停車した後ものったりしているし、出発しようとしてもすぐ詰まっちゃうので、いつまでもそこに居るように思われるが、長崎駅のバス停はとにかく回転が速い。ということで油断してると見過ごしそう。30分に一本しかないのでちゃんと乗らないと。と、無事乗れた。で、橋を渡って坂をぐいぐい登っていって15本ほどで到着。なんかしっとりした稲佐山中腹の公園だ。つうことで早速クモを探しに山頂に向かう道路に進み、300mほど歩いてわんさか狙いの種が網を張っているところにつく。イヤマジでわんさかいるので、採集は余裕かというとそうでもない。今回写真を撮りたいのはミナミノシマゴミグモで、これ交尾器破壊する種っぽく、交尾器が破壊されてないメスと破壊されてるメスと両方が必要なのである。が、経験上、交尾器破壊するクモのメスは、成体になってそれほどたたないうちにオスと交尾し破壊を受ける。のでその前のメス、つまり成体になったばかりのメスを見つけないといけない(交尾器が破壊されているメスの方が多数派のはずなのでこちらをみつけるのは苦労しない)。で、このクモがいつでも成体になっているかというとそうではなく、S宮さん情報によると成体が出てくるのはこの時期だというので、それで今週の調査ということになったのだけど、たとえば年による変動で出現時期が例年より前倒しされていたりすると、探してみてももう年増しかいないということだってありえる。そんなわけで、ちゃんと必要な個体が見つかるかどうか、緊張していた私なのであるよ。じゃあぱっと見で、オトナに成り立てか、とうがたってるか見分けられるかというと難しいわな。ぷくぷく太ってる娘は時間がたっている可能性高いかもしれないけど、それも定かとは言えない。じゃあ、どうするかというと、もう手当たり次第採集して交尾器の状態を確認するしかないわけ。採集後は麓に降りて長崎大で顕微鏡とカメラを貸してもらう約束になっているので、そこで確認しても良いのだけど、例えば30個体採集して、調べてみたらすべて破壊済みだったりしたら辛い。ので、採集現場で確認するのが無駄がないわけだ。そういう時の強い味方がTG-5で、捕まえたクモを薄いビニールの袋に入れて、その上から顕微鏡モードのTG-5で腹部を撮影すれば、破壊済みかどうか判別できる、と思ったわけだな。で、やってみるのだが、実はこの方法を使うのは初めてで、TG-5の小さなモニタ−に映った写真だとどちらのメスかイマイチ確信が持てない。最初何個体もとってみて、多分どれも破壊済みに見えるんだけど、で、それは予想に違わないので判断はあってると思うんだけど。。。ともあれ、この判断があっていれば、破壊済み個体は確保だ。念のため3個体を押さえる。で、問題の破壊前個体だが、これはひたすら採って見ていくしかない。で、どんどん見るのだけど、やっぱりなかなかそれっぽいのが出てこない。むむむ今年は気温高目で季節の進行が早かったりするとまずいのでは?と少し焦りが出てきた頃に、むむむ、これまでとは交尾器の中心部の光り方が違う個体が出てきたぞ。これでは?となる。ここまで15個体くらい採ったかな。頻度としてはこんなものか。うむきっとこれだ。よし確保。だけどやっぱり確信度合いに問題があるのでバックアップをゲットしようと、その後も採集を続けてこちらも3個体それっぽいのを確保。ここまでおよそ一時間。まあスムーズといえましょう。ということでバスで駅まで降りて、ホテルに戻って採集用具から撮影用具に持ち替えてチンチン電車で長崎大に。早ければ11時くらいに行きます、と言ってたところ11時半だったので、悪くないですね。水産学部のT垣さんのところへ。T垣は私が編集長だった某雑誌の次の編集長なので、その雑誌関連のあれこれについてちょっとお話させてもらってから撮影開始。ああ、この機械、オレの持ってるのよりずっと性能が良いやこれは素敵な写真が撮れるわね、と。不安だったクモの状態も確認するとバッチリ正解だった。ということで、この手法使える。30分ほどで撮影は終わるので、お礼を言って辞去。2階の研究室から階段を下りて1階を歩いていると、呼び止められる。大学院の同級生であるところのI上さんである。寸前彼の研究室の前をとおったので、いるかな?と覗いてみたけど空で、今日は晩ご飯に付き合ってもらう約束だったので、まあいいかとスルーしたら廊下の逆側の部屋にいて見つけてくれたらしい。そこの准教授のY田さんも出てきて、いやもう20年以上ぶりじゃないですか、ということでしばし雑談。じゃあまた夜にね、といっていったんお別れ。私には、撮影の終わったクモを再び稲佐山に返すというミッションがあるわけ。いやあしかし、T垣さんに機材貸してもらえて良かった。そうでなければこのクモたちは関西に連れ帰って私の機材で撮影することになり、そしたら返すわけにもいかないので標本にして殺さなきゃいけないところだったよ。長崎で撮影ができたので、生きたまま返す事ができるので気持も穏やかってものだ。と、外に出ると、暑い。今は13時前。せっかくの2度目の稲佐山登頂で、今度は時間の縛りもないので、久しぶりに周辺を歩いてみようと思うのだけど、この暑さはちょっとイヤだな、と思って、まずはお昼を食べることに。せっかくだから皿うどんだよねー、と思って、今や新地に行っても宝来軒はないのであるなあ、と悲しくなるのだが、いやまてここは長大じゃないか。少しくだれば別館がある。ということでそちらで太麺皿うどんを。くううううううううう、もうむっちゃうまい。久々に本場の皿うどんを食べた。たまらん。つうことで、すっかり機嫌が良くなって、というか昨日から機嫌は一ミリも悪くないのだが、外に。やっぱり暑い。これはもう少し時間を潰して気温が下がり始めてから上がろう、と考える。そうだそういえば本屋に行きたかったんだ、と、蛍茶屋に向かう。ここには私がすんでた頃にはなかった個人本屋ができているのだ。つうことでウニスカさんに。本屋を眺めるのも目的だが、ここでしか置いてないZINEを入手したいというのもあったのだな。で、懐かしいなあ蛍茶屋。ここは私がすんでいた山の上から車で降りてくる時の出口なのだ。ここのロイホは健在だった。で、ウニスカさんにドキドキしながら入る。で、店主さんともお話させてもらって、目的のものもゲット。幸せになって、でもまだ暑いのでホテルに戻ってまた荷物を積み替えしばし休憩。落ち着いてきたのでまたバスに。どうでもいいけど、2往復するのだったら一日乗車券を買っておけば良かったなあ。着いてクモたちにお疲れさん、と別れを告げてブラブラモードに入る。が、そこで気がついたのが、地面が盛大に掘り返されていることだ。これ、イノシシじゃない?イヤ気がつけばものすごい量の掘り返し跡がある。しかもフレッシュだ。そういえば7-8年前に調査してたら斜面の上のほうから何かガサガサって音が急速に近づいてきたことがあって、イノシシだ怖い!って思ったことがあったけど、どうも数が増えてる様子。コロナ禍で人が稲佐山にこない時があってそれで進出してきたとかなのだろうか?ともあれ、なんかこうなると舗装路から脇に入るのもちょっと憚られるので、安全そうなところを歩いてときどき写真を撮ったりして一時間半ほど歩くとすっかり夕方なので、再び麓に降りて長大病院近くで井上さんと晩ご飯。前回来た時に連れていってもらった寿司屋さんがたいそう美味しかったので今回も、と思ったのだけど、予約でいっぱいらしく、開いたところで電話もらうということで近くの立ち飲みでビール飲んでると、一時間も経たずに連絡が来て、お店に。22時過ぎまで楽しく近況報告。旨かった。